【日野市】世界が認めた日野市の誇り!TOYODAビールの歴史と研鑽を訪ねて「石川酒造」へ
世界が認めたTOYODAビール。その凄さ、歴史を知るために、製造元の石川酒造へ取材をしてきました!
TOYODAビールを手掛けるのは、福生にある150年以上の歴史を持つ老舗酒蔵「石川酒造」。
「なぜ日野市豊田のビールなのに福生で作っているの?」
そんな疑問に答えながら、「TOYODAビール」に込められた深い歴史とこだわりをご紹介します。
日野市から車で約30分。広大な敷地に驚きながら石川酒造へ足を踏み入れます。
現在、ガイド付きの見学は行っていませんが、酒造りの伝統や歴史を自由に学ぶことができ、「酒飲みのテーマパーク」としても親しまれています。
この地に酒蔵ができたのは明治13年。日本酒の造り酒屋らしく杉玉が飾ってありました。今でも、毎年新酒ができると真新しい緑の杉玉が吊るされるのだそう。
日本酒造りも気になるところですが、今回はTOYODAビールの歴史を探るため、まずは史料館へ!
現在、日本のビールといえばキリン・サッポロ・アサヒ・サントリーの大手4社が思い浮かびますが、明治時代には日本各地に100以上のブルワリーが存在していました。

石川酒造には史書が残されています
石川酒造もその一つ。明治20年に本格的にビール造りを開始し、「日本ビール(ジャパンビール)」という名前で製造・販売を行っていました。

明治時代に使っていたビールを運ぶためのケース
しかし当時のビール造りは困難の連続。今のような王冠はなく、瓶の口はコルクで栓をしていたため、舗装されていない道を輸送中に多くが割れてしまったのだと、そんな苦労話も記録に残っています。
また、税制の変化や戦争の影響で小規模な醸造所は次々に閉鎖を余儀なくされ、石川酒造も一時ビール醸造から撤退。しかし、酒造りへの情熱は失われることはありませんでした。
一方、日野市には石川酒造がビール造りを始める1年前の明治19年(1886年)に、多摩地域最古のビール工場が誕生していました。
当時の新聞広告には、石川酒造の「日本ビール」と並んで「山口ビール」という名前が掲載されており、このビール工場が日野市豊田にあったことが分かっています。しかし、このビール工場は数年で閉鎖され、幻のビールとなりました。

山口家に残されていたビール造りの記録
日野の山口家と、福生の石川家は縁者関係にあり、石川酒造がビール造りに参入する際、山口ビールに残されていた記録を参考にしたのだそう。
こうした縁もあり、TOYODAビールは石川酒造の元で復刻されることとなったのですね!ルーツは同じだったのです。
石川酒造の敷地内には、明治時代のビール造りを伝える貴重な遺産が残っています。
この中央にあるものはなにかわかりますか?
説明をしてくれた小池さんと並ぶとその大きさに驚きますが、なんと明治時代に実際に使っていた麦芽を煮て麦汁をとるという「糖化」の工程で使用していた釜なのです。
国内で現存する最古のビール釜とも言われています。
戦時中、多くの金属類が没収される中、この釜は奇跡的に残り、当時の職人たちの手によるビール造りの流れを今に伝えています。
明治時代のビール造りの工程が彫刻された欄間もあり、人の手によって一杯のビールが生み出されていた時代の情熱を感じさせます。
続いて「向蔵(むこうぐら)」と呼ばれるビール工房へ。
ここでビール造りについて少しだけ予習をしましょう。
日本でよく飲まれているビールは発酵の違いから大きく2つのスタイルがあります。1つ目は「ピルスナー(ラガー)=下面発酵」、もう一つは「エール=上面発酵」と言われるものです。TOYODAビールは発酵温度が低く、発酵期間が長い「ラガータイプ」のビールです。
次にビールの原料についても勉強します。
ビールの原料は実は4つだけ。大麦を発芽させた「麦芽(モルト)」と「ホップ」、「水」そしてアルコール発酵させるための「酵母」です。この調合の仕方で幾通りものビールが出来上がるのです。
原材料の一つの「水」ですが、近年のブルワリーでは水道水の使用が義務付けられているのですが、石川酒造は明治時代から続く伝統製法により、酒造りに適した仕込水(天然水)を使用しています。
この仕込み水が、TOYODAビールのまろやかでフルーティーな味わいを生み出します。
TOYODAビールの原料となる麦芽は4種類をブレンドしているのだそう。これにより、奥深く複雑な味わいが生まれます。
こちらの粉砕機で麦芽を粉にします。
糖化させるタンクへ移動。粉砕した麦芽にお湯を加え、糖化させることで「もろみ」になります。このもろみをろ過して次の工程へ。(この円錐のところから粉砕された麦芽がタンクに入ります)
タンクを上から覗いてみると中にスクリューがついており、均一に糖化されるようになっています。
もろみを濾した麦汁にホップを加えます。ホップはTOYODAビールのフルーティーでふんわりと優しく香るもとにもなっています。
続いてアルコール発酵をするためのタンクへ。酵母を加えることで甘い麦汁が発酵し、アルコールと炭酸ガスができます。
通常数日程度で発酵するタイプが多いビールですが、TOYODAビールは低温でゆっくりと発酵させるため約一ヶ月という長い時間をかけて緩やかに発酵を促します。この工程がまろやかでクリアな味につながります。
タンクの下からはぷくぷくと二酸化炭素がでていました。この後、タンクを移動させ、さらに長期熟成を重ねるのがラガービールの特徴です。
すぐには瓶詰めせず、低温でじっくりと熟成させることでTOYODAビールにコクが加わります。
最後に瓶詰めをしてようやく完成!取材時は石川酒造で作っている別のビールの瓶詰めを行っていましたが、見慣れた天狗マークのTOYODAビールもここから生まれます。
石川酒造のもう一つのお楽しみは、敷地内にあるイタリアンレストラン「福生のビール小屋」。
トマトや発酵食品を多く使うイタリアンは旨味の多い料理で、日本酒やビールともよく合うのだそう。
作りたての新鮮なビールと共に、暖炉のある温かな空間で本格的なイタリアンを楽しめます。
もちろんTOYODAビールも!
こちらのレストランは人気なので事前予約がおすすめです。
取材時はあいにくの雨でしたが、もう少し暖かくなると八重桜が美しく咲き誇ります。
世界が認めたフルーティーで滑らか、深いコクのあるTOYODAビールは、2025年で復刻から10周年を迎えます。
4種の麦芽を使用し、ラガー特有の低温長期発酵・熟成を経て作られる1杯には、歴史と復刻のための研鑽が折り重なっているのです。
日野市民のみなさんにも、地元の誇りである「TOYODAビール」の魅力を改めて知り味わってみませんか?そして、この歴史と味わいを誰かに伝えてみてください。
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