【日野市】駅から5分、まさかの場所に“お菓子の工場”!?老舗・紀の國屋の知られざる裏側を特別見学
日野市で暮らしている方なら、一度は名前を聞いたことがある老舗和菓子店「紀の國屋」。先日も、大阪・関西万博のスイーツで話題になりましたね。
和菓子や洋菓子が並ぶお店として親しまれていますが、そのお菓子が「実は本店のすぐ奥で作られている」ということをご存じでしょうか。

今回、ふとした会話の中で「裏に工場があるらしい」という話を聞き、特別に、普段は関係者以外立ち入り禁止となっている製造工場の中を見せていただけることになりました。

本店の場所は、JR日野駅から徒歩5分ほど。目の前にはイオンモールがあり、人通りも多いエリアです。こんな街なかにお菓子の製造工場があるとは、知らない方も多いのではないでしょうか。

今回工場を案内してくださったのは、工場長の齋藤さん。

齋藤さんは、生産管理や生産技術、新商品の考案、業者さんとのやり取り、製造工程の設計、機械の導入まで、和菓子・洋菓子すべてを一手に担っている方です。

「紀の國屋のお菓子は、すべてここで考え、試作し、量産まで行っています。」その言葉どおり、工場全体を把握し、紀の國屋の商品づくりを支える存在です。

工場見学に伺ったのは、2026年2月3日の節分の日。中に入ると、そこでは大量の恵方巻きが次々と作られていました。

完成した箱には、「アレルギー対応」「学童」「紅しょうが抜き」と書かれたラベルも。
お話を伺うと、紀の國屋では昔から地域の学童等へ、節分の日の恵方巻きを届け続けているそうです。

地域の子どもたちが、日本の伝統行事を食を通して楽しめるように。それを地元のお菓子屋さんが長年支えてきたというのは、とても素敵なことですよね。

近年は特にアレルギーへの配慮が求められるようになり、卵を使わないもの、紅しょうがを抜いたものなど、具材を細かく分けて製造しているそうです。
こうした細やかな対応ができるのも、地域に根ざしてきたお店ならではなのではないでしょうか。

この日、恵方巻きと並行して作られていたのが、道明寺(桜餅)でした。桜風味のもち米で炊いた生地にあんこを包み、塩漬けした桜の葉でくるむ、春を告げる定番の和菓子です。

工場内では、あんこを一定量ずつ出す機械が稼働する一方で、桜の葉で包む工程は一つひとつ手作業。機械と人の手が自然に役割分担しながら、お菓子が仕上がっていく様子が印象的でした。

紀の國屋の道明寺に使われている桜の葉は、そのまま食べられる食用のもの。背の低い食用桜の木から農家さんが一枚一枚手摘みし、塩だけで漬け込んだものだそうです。

「最近はこうした農家さんも減ってきて、ずっと同じものを仕入れられるとは限らない」と、原材料の高騰や農家さんの継続が難しくなっている現状についても話してくださいました。

価格とのバランスを考えながら、品質を守り続けることも齋藤さんの大きな使命のひとつです。

工場内には、紀の國屋の名物でもある「黄金杯」など、焼き菓子を焼き上げるオーブンもありました。

発酵バターを100%使用した贅沢な「黄金杯」は、芳醇なバターの香りが口いっぱいに広がる人気商品。

たっぷり詰まったあんことの相性もよく、贈り物や帰省の手土産にもぴったりです。

こちらのオーブンは、焼成中の様子が遠隔でも確認できる特別仕様。
どの温度で、どれくらい焼くのが一番おいしいか——数多くのお菓子を生み出してきた試行錯誤の積み重ねが、ここにもありました。

実際に製造を担っているのは、主にパートの方々。長い方では30年以上、この工場でお菓子を作り続けているそうです。

工場の中を見ていて特に印象に残ったのは、機械や器具、ボウルや泡立て器に至るまで、とにかく整理整頓され、清掃が行き届いていること。

齋藤さんは、「うちのパートさんたちは本当にレベルが高いんです。製造だけでなく、段取り、後片付け、翌日の準備まで、本当に丁寧にやってくれる」と、胸を張って話していました。

こうした熟練の方々がいるからこそ、変わらないおいしさを届け続けることができるのでしょう。

紀の國屋の工場では、小ロットでの製造ができる強みを生かし、さまざまな地域コラボ商品も生まれています。
日野市の姉妹都市・紫波町のお米を使った和菓子「まん福」や、日野市唯一の養鶏場・由木農場のさくら卵、日野産りんごを使ったアップルパイなど、地域の素材で、地域の人のために作られたお菓子たち。

そのほか、トマトゼリーやブルーベリージャム(コンフィチュール)など、形が崩れてしまったB級品の果実も無駄にせず、お菓子やジャムとして生まれ変わらせています。

添加物やペクチンを使用せず、シンプルな原材料で仕上げたブルーベリージャムは、完熟した果実そのものを食べているような味わいです。
お菓子を作る人も、農家さんも、食べる人も幸せになる。そんな循環が、この工場にはありました。

駅前のにぎやかな通りのすぐ裏で、65年にわたり、地域のためのお菓子を作り続けてきた紀の國屋。

普段は見ることのできない工場の中には、人の手、地域への想い、そして積み重ねてきた時間が詰まっていました。

お店に並ぶ一つひとつのお菓子の向こう側に、こんな風景があることを、少しだけ知ってもらえたら——日々の暮らしの中で、ふと心があたたかくなる瞬間が増えるかもしれません。
- 住所
- 東京都日野市多摩平1-5-2
- 営業時間
- 9:00~19:00(年中無休)
- 最寄り駅
- JR中央線豊田駅北口 徒歩5分
- 電話番号
- 042-581-1358
※情報は取材当時のものです。来店の際は公式情報をご確認ください。








